従順なジェイを、ブラウは貫く。
何度も、何度も。
自分は初めての発情期に入っているのだと、頭の隅っこでブラウは思った。
ごろりとベッドに仰向けになったままのジェイの足を肩に担ぎ上げ、ブラウは後ろの孔に自身を突き立てる。
もう、何度目かもわからないぐらいだ。
ジェイの性器だけでなく、腹から尻にかけても精液と唾液にまみれており、シーツに大きな染みを作っている。ブラウもそうだ。口元にこべりついたジェイの精液が、乾いて白くなりかけている。 意識があるのかないのか解らないような状態のジェイを、壊れ物を扱うかのようにブラウは大切に抱く。
迸りがジェイの内部をいっぱいに満たし、互いの結合部から溢れ出してきても、それでもブラウはジェイを苛み続けた。
そうすることで、いつかジェイが元に戻ってくれるのではないかと願っているのかもしれない、ブラウは。
「あっ、あ……ぅんっ、はっ、はぁっ……」
息を荒げてブラウは、腰を突き動かす。限界が近付いてきているのは解っていた。ジェイと一緒に達することが出来ればと、二人の腹の間で鎌首をもたげてひくついているものをブラウは片手で扱いた。
「あぁっ……んっ、ふっ、あぁぁ……」
別な方向からの突然の刺激に、ジェイが声を上げる。こういう時の反応だけを見ると、ジェイが元に戻ったように感じることがある。
右肩から、担ぎ上げた足がずり落ちそうになるのをブラウは腕全体で担ぎ上げ直す。もう片方のジェイの足に、くい、とブラウの背を押さえるように力が込められる。
「ジェイ……ジェイ、ジェイ……!」
腰を揺さぶりながら、ブラウはピストン運動を繰り返す。
浅く、深くブラウが突き上げる度に、ジェイは甘い声で啜り泣いた。
「くっ……うぅぅんっ……あっ、ぁふっ……」
膝を閉じ気味にして、ジェイの射精が始まる。きゅっ、と尻の孔が窄まり、ブラウを締め付けた。
ブラウは、ジェイの内壁を擦り上げるようにして最奥を突くと大きく身体を震わせ、達した。
夜明け前にブラウはベッドを抜け出した。
窓の向こうは薄暗く、シティのほうからは生活の音が微かに届くばかりだ。大通りを行き交う車両の音はわずかで、ほとんどの人々はまだ眠りの中にいる。
ジェイはブラウの隣で目を閉じてはいたが、眠っているのか起きているのか、ブラウには解らない。あの男に気持ちを奪われ、「壊れ」てしまって以来、ジェイはずっとこんなふうだった。
「──必ず戻ってくるよ、ジェイ」
耳元に囁きかけるとブラウは、ジェイの頬に口付けを落とす。
腹立たしいことにジェイは、どんなにブラウが献身的に世話をしたとしても元には戻ってくれなかった。かくなる上はあの男をここへ連れてくるしかないとブラウが思い詰めるようになったのは、ここ一週間ほどのことだ。
発情期に入ったブラウの体は、ジェイという保護者を失ったことで、戸惑っていた。自分の感情や体の火照りを思うようにコントロールすることが難しくなり、ブラウの世話をするどころではなくなってしまったのだ。
ベッドに横たわるブラウを見るたびに、体が熱くなる。夜となく昼となくブラウを抱き、そのうち、抱き壊してしまいそうなことに怯えるようになった。
もう、これ以上は二人だけの生活を続けていくことはできないかもしれない。そう思うようになったブラウはようやく、あの男のことを思い出すに至った。リーイなら……彼なら、何か知っているかもしれない。オリジナルのことを知っていた男だ。ブラウのこの熱の鎮め方や、ジェイの「壊れ」た心を修復してくれる術を何かしら、知っているはずだ。
会いに行ってみようと思った。
あの男のところへ。
リーイがどこにいるのかは知らなかったが、捜せばきっと会えるだろう。いや、シティ中を捜してでも、あの男を捕まえ、ここへ連れて帰る。
ブラウのためにあの男一人を見つけだすことぐらい、訳のないことだ。
「行ってくる」
ベッドに横たわったまま動かないジェイに呟きかけるとブラウは、ゆっくりと息を吐き出した。
闇の中に浮かび上がるブラウのシルエットがぐらりと傾ぎ、崩れ落ちるように床に四つん這いになる。DNAの配列変換が完了するまで、ほんのわずかな時間しかかかっていない。
獣の姿に変化したブラウは気怠そうにのそりと部屋を出て、バルコニーから表へと飛び出していく。
風は生暖かく、どこからか血のにおいが漂ってきている。
行き先は、一つ。
やつの……リーイの、ところだった。
(H24.10.21改稿)
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