平太郎とマツはいまだに戻ってこない。
一度、電報で、戻りはひと月ほど先になると連絡があった。
伸太郎が想像したように、両親は千代と伸太郎を夫婦にしようとしているようだった。
あの夜から千代と伸太郎の二人は、暇さえあれば睦み合うようになった。
伸太郎の手は毎晩、優しく千代の体をまさぐってくる。そのうちに感極まって千代が啜り泣き始めると、少しきつく乳首を抓ったり、膣の上にある小さな突起を指の腹でぐりぐりとにじり潰したりする。そうされると、千代の体はさらに熱く震えた。
恐ろしくはなかった。
痛みの向こうにある快感が心地よくて、伸太郎の手で酷く嬲られると千代はいっそう激しく腰や胸を擦りつけ、淫らな声をあげるのだった。
記憶の中の忌まわしい思い出とは違い、伸太郎は優しく千代の体を愛撫してくれる。大切にしてくれる。
だから、たいていは何か物足りない感じがしてならない。
伸太郎に優しく抱かれ、愛されていることを実感して尚、千代は別のものを欲しがる内なる自分に気付いていた。
──アレが、欲しい。身悶えるほど恥ずかしくて、体を熱くする、あの、感覚。
面と向かっては恥ずかしくて口にすることもできないが、千代が本当に望んでいるのは、欲しているものは、いまだ伸太郎が千代に与えてくれないものだ。
生娘ではない千代には与えられないと、もしかしたら伸太郎はそんなふうに思っているのかもしれない。
それでも構わないと千代は思っていた。
それならそれで、もっと酷くして欲しい。恥ずかしくて顔も見れなくなるほどに、いやらしいことをして欲しい。
とは言え、そんなことを千代のほうから言い出せるはずもない。
結局はいつものように伸太郎のほうから声がかかり、優しく抱かれるのが毎夜のこととなっていった。
ある雨の日、客ももう来ないだろうから今日は店を閉めようと伸太郎が言い出した。
まだ夕方にもならないのにと不思議に思いながらも千代は義兄の言葉に従い、暖簾を下げ、店じまいをした。
用事を片付けて中へ戻ると伸太郎は、千代を自分の部屋へと連れて行った。いつものことだ。夜、店仕舞いをした後で伸太郎はいつも、千代を自分の部屋へと連れて行き、抱くのだ。
だから千代はおとなしく伸太郎に従った。
物足りなく感じることはあっても、伸太郎に抱かれることを千代は望んでいた。平太郎夫婦に対する罪悪感は、二人の不在が長くなるにつれ、千代の中で薄まっていった。もしかしたらこのまま、罪悪感など消えてまうのかもしれないと、逆にそれを不安に思うほどだった。
部屋に入ると、既に布団が敷いてあった。
「千代……」
背中から千代の体を抱きしめると伸太郎は、耳たぶをやわやわと甘噛みする。
「……ぁ、ん」
艶めかしい声が唇から洩れるのが恥ずかしかったが、千代はゆっくりと背中を兄の胸に預けていく。
「伸太郎兄さん……」
伸太郎の手が、千代の胸を服の上から揉みしだく。
「千代……今日は、襦袢を着てくれないか」
そう囁くと伸太郎は、あらかじめ押入に隠しておいた緋襦袢を取りだし、千代の前に広げて見せた。
「これを……ですか?」
少し困ったように、千代は義兄の顔を見た。
襦袢の緋色は鮮やかで、美しかった。数日前に質流しになったものだ。良いところの出の未亡人が持ってきたのだが、彼女が引き取りに来ることはとうとうなかった。大切に扱っていたのが一目でわかる品だった。
着て欲しいと兄に言われて、千代の心が動かなかったはずがない。だが、恥ずかしいのも確かだった。
「そうだよ、千代。一人で着られるね?」
優しく、しかし有無を言わさぬ調子で伸太郎は言い切ると、部屋の外へと出た。襖ごしに待っているから、早く着替えるようにと千代に言ってくる。
千代は、着ていたものを全て脱ぎ去ると枕元に丁寧に畳んで置いた。
緋襦袢だけを身に着けると、肌がぞわぞわとして、どうしてか淫らな気持ちがしてくる。 布団の脇に膝をつき、もじもじしていると、音もなく襖が開いた。
「焦らさないでおくれ、千代」
襖の向こう、こちら側に背を向けて立つ伸太郎が、掠れた声で囁いてくる。
「焦らしてなんていません、伸太郎兄さん。どうぞこちらを向いて、千代を見てください」
千代が声をかけると、伸太郎はそろりと部屋へ入ってきた。
「ああ……綺麗だよ、千代」
感極まったように伸太郎が囁く。その声は掠れて、欲情にまみれている。
「伸太郎兄さん……」
千代は真っ直ぐに伸太郎を見つめた。
これから伸太郎に与えられる快感を思って、千代の股の間がじわりと熱くなる。緋襦袢のせいだろうか、何故だかいつも以上に淫らな気分になってくる。
「今日はこのままで抱いてあげるよ、千代」
そう言うと伸太郎は千代の背後に回り、畳の上に膝をついた。
優しい手つきで千代の体を背中から抱きしめ、襦袢の上から胸の膨らみをやわやわと揉みしだく。
「あ……っ」
襦袢の合わせの隙間から伸太郎の手が侵入してくる。千代の肌に直接触れ、焦らすようにゆっくりと、胸のほうへとおりてくる。
「お前の汗はいい匂いがする」
伸太郎は呟いた。
赤い襦袢がはらりと肩から滑り落ちて、千代の上半身が露になる。
「伸太郎兄さん……」
震える声で兄を呼ぶと、両の乳首をきゅっ、とつまみ上げられた。
「ああっ……!」
ヒクン、と千代の身体が大きく跳ねる。
背後の伸太郎は、低く喉の奥で笑った。その微かな振動ですら、千代の身体は感じ取っている。
「千代。千代のおそそはもう濡れているね。いやらしいお汁でベトベトになっているよ」
ほら、と伸太郎は乳首に触れていた手を股の間に差し込んだ。ぬちゅり、と音を立てて、伸太郎の指は千代の蜜壷に沈められていく。
「んっ、ん、く……ぁ……」
前へと伸ばした足をもじもじとすりよせながら千代は、くぐもった声をあげた。
伸太郎の指は自由自在に千代の中を掻き回した。ぐちゅぐちゅと湿った音を立てながら、収縮する襞を引っ掻き、指で押し返し、擦り上げた。
千代の身体は快楽に素直だった。
伸太郎の愛撫に応えるように蜜壷からはトロトロと蜜を零し、甘えるような媚びた嬌声を上げ続ける。
襞の中がヒクヒクと蠢き、伸太郎の指をこれでもかと喰い締めてくる。ざらついた粘膜を擦り上げると、それだけで千代は白い喉を露にし、背をのけぞらして声をあげた。爪先がきゅっ、と丸まり、愛液がとめどなく溢れて伸太郎の手をしとどに濡らしていく。
「ああ、気持ちよさそうだね、千代。こんなに洩らしたら、布団に染みができてしまうのに」
言いながら伸太郎は、千代の可愛らしい小豆のような陰核を爪の先で押し潰した。途端に千代の身体が魚のように、ビクン、と大きく跳ねる。
「ヒッ、ああぁ……!」
ダメ、と千代は口走った。
熱に浮かされるように呟くと、伸ばした足を立て膝にし、股を大きく広げた。
「痛くしないで……お願い、伸太郎兄さん。痛いのは、イヤ……」
花芯を見せつけるようにいやらしく腰を突き出し、千代は首を巡らせた。舌を突き出し、伸太郎にくちづけをねだる。
舌の先っちょが触れるか触れないかの距離を楽しんでから、深く唇を合わせた。くちゅっ、と湿った音を立てながら、舌を絡め合う。じゅるじゅると唾液を啜り上げる音が、二人の唇の間で淫猥に響いている。
伸太郎は千代の胸と蜜壷を同時に愛撫した。
赤い襦袢に千代の愛液が滴り落ち、濃い染みを作っていく。
「あ、あぁ……」
もどかしそうに千代は呻くと、伸太郎の腕にすがりついた。
「もっと……伸太郎兄さん、もっと、気持ちいいの、ちょうだい……」
すがりついた手で兄の腕をそろりと撫でると千代は、とろけた表情で微笑んだ。
「兄さんの……おっきいのが、欲しいの」
千代の腰のあたりにまとわりつく赤い襦袢が波打ち、衣擦れの音がいやらしく響く。
「どこに欲しいんだい?」
すかさず尋ねられて、千代は頬を赤らめた。
「千代の……お×××に、伸太郎兄さんのおっきぃのを、ください……」
無垢な眼差しが伸太郎をまっすぐに見つめている。
「そんなに欲しいの?」
伸太郎は、千代の乳首を弄ぶかのようにきゅっ、と軽く捻った。
「あぁ、ぅ……っ……」
小さく呻きながらも千代は頷いた。
「ちょうだい。兄さんのおっきぃおちんちんで、千代の中をぐちゃぐちゃにして……」
「指では駄目なのかい?」
くりゅ、と伸太郎は千代の膣壁を引っ掻いた。むせびなくように奥のほうから愛液が滴り降りてきては伸太郎の指にまとわりつく。
「嫌……兄さんのおっきぃのじゃないと、嫌なの……」
恥じらいながらもそう告げると千代は、伸太郎の腕の中で体ごと向きを変えた。
「千代を……伸太郎兄さんの、お嫁さんにしてください」
頬を真っ赤にして千代は切々と訴えた。
処女を失ったのはここへ来る前のことだが、好いた男性の花嫁になるのはこれが初めてだ。恥ずかしそうに俯いて、千代は伸太郎の言葉を待った。
「……いいよ。千代を、僕の花嫁さんにしてあげるよ。千代のこの可愛らしい××××の中にたっぷりと子種を注ぎ込んで、僕だけのものにしてあげるよ」
ふわりと抱き締められて、千代は小さな吐息を洩らした。
「兄さん……」
兄の体を抱き締め返すと、つむじに優しくくちづけられる。
安心したかのように千代は体の力を抜いた。すぐに伸太郎の手が千代の身体を布団の上に横たえた。
布団の上に押し倒された千代は自分から進んで大きく足を開いた。
伸太郎は舐めるような眼差しで、ひとつひとつ千代の身体を検分していく。優しい眼差しだが、時折、怖いほど真剣な顔つきで千代の身体を見つめることがある。
「……兄さん」
上擦った声で千代は兄を呼んだ。
「来て……千代の中に……」
手を差し伸べ、千代は兄を待つ。
伸太郎は千代の蜜壺に、硬く張り詰めてらてらと黒光りのする陰茎をそっと添えた。入り口の襞を先端で何度か擦り、先走りをなすりつける。
「伸太郎兄さんの熱くてドロドロしたの、たっぷりと千代の中に出して……」
いやらしく腰をくねらせながら千代は囁いた。
とうとう伸太郎の花嫁にしてもらえる時がきたのだ。嬉しくて嬉しくて、千代の蜜壺は喜悦におののき、トロトロと愛液を滴らせる。
「綺麗だよ、千代。僕の可愛い千代……」
呟きながら伸太郎は、腰を押し進める。つぷ、と蜜壺の中心に伸太郎の先端が突き刺さり、勢いよく中へと押し込まれた。
「ひっ、あ、あ、あ……!」
激しい衝撃に千代は思わず声を上げていた。
パン、と腰骨がぶつかり音が上がる。
いきなりの大きな抽送に千代の腰が浮き上がる。そのまま大きく揺さぶられ、蜜壺の中を激しく掻き混ぜられた。
「ああ……ゃ、ぅ……」
伸太郎の揺さぶりに、千代は悶えながら啜り泣いた。喜びの嗚咽は獣のように部屋に満ち、しばらくの間、二人の喘ぎ声と湿った淫音だけがあたりには響いていた。
そのうちに伸太郎が千代の両足をくい、と肩にひっかけ、結合をさらに深くした。
千代は大きくのけぞると、惜しげもなく嬌声をあげながら潮を吹いた。パシャ、と透明な体液が二人の間に飛び散り、布団を濡らす。
「や……も、兄さん……イく……イっちゃぅ……」
掠れる声で千代が口走ると、伸太郎のペニスが千代の中でぐん、と嵩を増した。内壁をみっちりと塞いだ性器が、激しく千代の中を擦り上げる。子宮口を突き破らんばかりの勢いで突き上げを繰り返すと、千代は小刻みに体を震わせながら高みへと昇り詰めた。
結合部からは千代の愛液と伸太郎の先走りとが混ざり合い、滴り落ちてくる。二人の体液と汗とでしっとりと湿った布団はそこここにいやらしい染みを浮き上がらせている。
「千代……」
掠れた声で義妹の名を呼ぶと伸太郎は、ひときわ大きく千代の中を突き上げた。
「ひぁっ、ん、んん……!」
とぷっ、とチラの腹の中に白濁が叩きつけられる。熱くてドロドロとしたものが腹の中を満たし、それでも飽き足らずに伸太郎は千代の腹の上にも白濁を滴らせた。
「あ、あ……かけて……伸太郎兄さんの、もっとかけて……」
赤い舌を閃かせながら千代が懇願すると、伸太郎はそのいやらしいぽってりとした唇に白濁をなすりつけた。
「ん、ん……」
ちゅぱっ、と音を立てて千代は伸太郎の残滓を舌で舐めとる。
ようやく義兄の花嫁にしてもらえたのだと思うと、千代は嬉しくて仕方がなかった。
「伸太郎兄さん……」
甘く掠れる声で囁くと千代は、兄の体に腕を回し、愛しそうにぎゅっ、と抱きしめた。
(H14.3.22)
(H28.10.17改稿)
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