<オーヴリィ・スタッドの章>

  夏の終わりの二週間を、スゥは駐屯地裏の湖で過ごすことにした。
  駐屯地には二週間だけの恋人オーヴリィ・スタッドがいた。命令違反を犯したために上官から謹慎を命じられていたオーヴリィと出会ったのは、ほんの三日前のことだ。
  一目でスゥは、彼のことを気に入った。
  逞しい体格に、均整の取れた目鼻立ち。絶えることのない大らかな笑み。そして何よりも彼は、色々な意味でスゥを悦ばせる方法を知っていた。
  スゥは軍人を相手に身体を売って生活している女だった。
  現在、地球は金星大反乱の波に巻き込まれ、毎日のように各地で金星反乱軍と地球軍との戦いが繰り広げられていた。スゥのように特技もなければ教養もお金もない女は、軍人を相手にするしか方法がなかったのだ。軍人であれば……いや、日々の生活を持たせることが出来るなら、スゥは相手が誰だろうと構わなかった──地球軍の兵士であれ、反乱軍の兵士であれ、そしてそれ以外の男だろうと。
  要は、生活が出来ればそれでよかったのだ。
  三度の食事と、少しのお酒。反乱軍が地球へ降りてくる以前には着たことのなかったような、露出度の高い衣服。微かな男の匂い。それら全てがスゥの財産。
  湖の側の窪地でスゥは、オーヴリィと抱き合った。
  生活を守るため。
  そして自分自身の、快楽のために。
  何よりも、スゥから見てオーヴリィはなかなかに素敵な男性に見えた。彼なら、自分のことをきっと大切にしてくれるだろう。
  たった二週間のことでしかないけれど。



  謹慎を食らったオーヴリィの噂は、同期の友人イェルマーの耳にも届いていた。
  何でもオーヴリィは、上官の命令に従わなかったばかりでなく、暴力を振るったのだという。
  訓練生時代、上官に対して最も反抗的だったオーヴリィの精神は、どうやら今も健在のようだ。
  イェルマーは深い深い溜め息を吐くと、オーヴリィの部屋へと足を向ける。
  嫌な役回りだと思わずにはいられなかった。
  訓練生の中でいちばん落ちこぼれのオーヴリィに、訓練生の中でいちばんの出世頭のイェルマー。二人は同期で軍学校に入学して以来の親友だった。そのオーヴリィに、イェルマーは命令を下さなければならなくなった。
  ──嫌な役回りだ。
  口の中で呟いたイェルマーは、オーヴリィの部屋のドアをノックする。
  命令の内容は、オーヴリィをHU戦闘機の新型機テストパイロットに任命することとなっていた。
  イェルマーは命令書の、新型機のテストパイロットという下りに大きな不安を感じていた。
  現在、地球軍は金星反乱軍との戦いに備え人型戦闘機の開発に力を注いでいるが、今までのところそのどれもが中止、或いは延期を余儀なくされていた。
  ヒューマン・ユニットと呼ばれるHU戦闘機の開発はもともと、地球でされていたものだ。しかし開発初期のユニットが金星反乱軍に略奪されて以来、地球で開発するものは常に反乱軍よりも一歩遅れたものという状態が続いていた。そのため、地球軍は別の視点でユニット開発を計画せざるを得なくなってしまった。
  おそらく、オーヴリィが操縦するユニットは、新しいタイプのものになるはずだ。
  それをイェルマーは怖れていた。
  バイオノイドをパイロットに仕立てあげたバイオ・ユニットは、人間が塔乗する以上の破壊力とスピードを誇っていたが、バイオノイドの覚醒時に暴走事故が多発し、計画は中止となった。その次のブリンデッジタイプは双子計画と呼ばれ、精神を共鳴することのできる双子、もしくはごく近しい存在の兄弟をパイロットとしたが、これも様々な弊害のため計画延期となっている。残っているのは、セクメロイドをパイロットとするトライヘッドタイプのユニット開発のみ。だが、その開発に関しても、あまり芳しくない噂がイェルマーの耳に入ってきていた。
  テストパイロットに危険はつきものというのは当然のことだったが、イェルマーは、こうした特異なユニットの開発には反対だった。
「よ、どうした?」
  わざわざドアを開けて姿を現わしたオーヴリィは、そんなイェルマーの心の内など知りもせずに、にこやかにかつての同期生を歓迎する。
「謹慎……だって?」
  言いにくそうに、イェルマーは口を開いた。
「ああ、まあな、そうなんだけどな」
  言葉を返しながらオーヴリィは、イェルマーを部屋の中へと招き入れる。
「でも、そう言うお前も謹慎だろ?」
  と、にやにやと悪気のない笑みを浮かべ、オーヴリィ。
「謹慎は謹慎でも、強制療養のための謹慎だよ、俺のは」
  苦笑いと共にイェルマーは告げる。
「強制療養?  そりゃまた、なんで?」
  と、オーヴリィ。
  オーヴリィが謹慎を命じられるのと前後して、イェルマーもまた、謹慎を言いつけられていた。もっとも、イェルマーの場合は敵状視察のために危険地区へと入りこみ、精神に重大な支障を及ぼすほどの過酷な状況の中で戦闘を行ったからなのだが。
「ああ」
  と、イェルマーはふっと宙に視線を漂わせた。
  しばらく何事かを考えるかのように黙りこくっていたが、やがて口を開くと、抑揚のない声でぽつりと呟いた。
「見たんだよ、死神を」
  砂嵐の中でイェルマーは死神を見たと思っている。本当にそれが死神だったのかどうは定かではないが、仄暗い影を砂嵐の中に見た瞬間、激しく砂を巻き上げていた風の音がすーっ、と止んだのを覚えている。影は一瞬、イェルマーの姿をそのガランとして落ち窪んだ眼孔が捕らえたはずだった。捕らえたものの、さほど興味を惹かれなかったのか、次の瞬間にはふいと姿を消してしまっていた。その直後に再びイェルマーは激しい砂嵐の中に放り出されていた。助かったのだと思った。砂嵐の中を這うようにして近場の岩陰に逃げ込むことに成功したのは、あの時、死神が目を反らしてくれたおかげだと思っている。
「死神だって?」
  笑い飛ばすでもなく馬鹿にするでもなく、怪訝そうにオーヴリィは尋ね返しただけだった。



  トライヘッドの開発は順調に進んでいるという噂だ。
  セクメロイドと呼ばれる種類のアンドロイドをパイロットに据えたことで、人間が操縦する以上の防御力、攻撃力を実現可能にしたこの計画は、対人間戦の回数をこなすことで更に優れたユニットを作り上げることになるだろう。
  トライヘッドの開発に関わるスタッフたちは皆、そのように信じて疑わなかった。
  オーヴリィは日中をトライヘッドの格納庫で過ごし、夜は駐屯地内にあるスゥの小屋──娼婦たちは、駐屯地の裏口近くに無造作に建てられたバラック小屋で生活をしていた──で過ごすようになっていった。
  もちろん自分の部屋へ戻ることもあったが、オーヴリィにとってはごく稀なことで、しばらくするとスゥの小屋が自分の部屋と同じぐらいに居心地のいい場所になった。小屋へ行けばスゥがいたし、好きな時に抱き合うこともできた。もっとも、互いの意見が一致すればの話だったが。
  ユニットに乗り込んで適当に戦って、自分の好きなことだけをする日々が続いた。好きなことといってもだらだらとただ日々を過ごすだけで、特に何をするでもない一日が延々と続いているだけだ。オーヴリィはこの生活がずっと続けばいいのにと半ば本気で思い始めていた。
  テストパイロットでいれば、前線へ出て戦わずにすむし、何よりも生死に関わるような危険な任務を命じられることもない。整備の連中に適当に意見を述べて、セクメロイドを相手に適当に戦っていればいいのだ。戦闘といっても模擬戦闘だから、実際に怪我をしたり殺されたりということもない。気楽なものだ。
  同期のイェルマーは、数日して謹慎が解けると再び第一線へと戻っていった。ああはなりたくないと、オーヴリィは思っている。それはおそらく、二人が生まれ育った境遇の違いからきているのではないだろうか。
  イェルマーは幼い頃に何年かを金星で過ごしている。ちょうど大反乱の起こる直前の金星を、彼は自分の目で見ているのだ。オーヴリィ自身は彼の口から当時のことを聞いたわけではないが、随分と色々な体験をしているようだ。それにイェルマーには、どうやら守りたいものがあるようだった。ガールフレンドの一人もいない堅物で通っているイェルマーだが、オーヴリィの推測では、金星に想い人がいるのではないかと思われることがあった。
  一方のオーヴリィは、癇癪持ちの父親とアル中の母親の間で邪魔物扱いされた挙げ句、逃げるようにして軍学校へ入学している。軍学校のほとんどには寮があり、三度の食事に食いっぱぐれることがなかったからだ。別に守りたいと思うようなものもないし、地球を守らなければならないといった危機感も持っていない。オーヴリィの判断基準内で衣食住が満たされていると感じられる環境であれば、どんなところでもよかった。言ってしまえば、別に地球軍でなくともいいということだ。もしも金星にいたなら、彼は金星軍に入っていただろう。その程度のものなのだ、オーヴリィの軍に対する忠誠心とやらは。
  テストパイロットとしてこの駐屯地でのんびりと過ごす日々が、オーヴリィにとっては充実したものに感じられた。
  『何一つ危険のない模擬戦闘』。それが、開発チームの売り文句だ。
  模擬戦闘の相手であるセクメロイドの外見は二十歳そこそこの青年の姿をしていたが、精神年齢は人間の四、五歳ということもあって、今のところオーヴリィが優勢だ。もちろん、日に日にセクメロイドも成長しているはずだったが、これまでにそのことに対して恐怖したことはない。何と言ってもセクメロイドは、人間を傷付けるようにはできていない。だから『何一つ危険のない模擬戦闘』と開発チームは詠うのだ。
  オーヴリィが気にかけることといったら、その日のスゥの機嫌の善し悪しと食事の内容、それに次の給料日にいくらの手当てがついているか、だった。
  そのうちにオーヴリィの模擬戦闘に対する警戒心や危機感といったものが薄れ始めた。テストパイロットなら常に感じていなければならない、戦闘に対する緊張感をオーヴリィは失してしまっていた。



  模擬戦闘が何日も続いた。
  日増しにセクメロイドは、力をつけてきていた。
  まずスピードが互角になり、それから反射神経が。オーヴリィの癖や動きを真似て、セクメロイドは次第に強くなってくる。
  このごろオーヴリィは、セクメロイドに嫌悪を感じるようになっていた。
  セクメロイドはオーヴリィよりも上手にユニットを操る。まるで自分の体の一部ででもあるかのように、難なく動かしてみせるのだ。
  そのうちに、セクメロイドは日常生活の上でもオーヴリィを真似るようになってきた。オーヴリィを理解し、同化して、すべてを自分のものにしようとしていたのだ、セクメロイドは。
「──不調続きだな」
  ペイント弾で真っ赤になったユニットのコクピットからごそごそと出てきたオーヴリィに向かって、スタッフの一人が声をかけてきた。
  つい三日ほど前から、オーヴリィとセクメロイドの立場は逆転してしまっている。
  セクメロイドは的確で完璧な攻撃を次々と展開し、オーヴリィの動きを完全に封じるまでに成長していた。
「相手がニンギョウだからって、いつもいつも俺が勝ちを挙げていたらつまんねぇだろ?」
  苦笑いをしてそう言うオーヴリィは、心の奥底でひしひしと恐怖感を感じていた。
  ──このままいけば、いつか俺は殺されてしまう。
  ──殺られる……
  通常のセクメロイドは、人間に対して危害を加えることのないように設計されている。ただし、例外というものはいつもどこにでもある。戦闘用に開発されたセクメロイドが存在し、実際に金星での反乱時に使われたというデータも残っている。模擬戦闘で使われているセクメロイドが、戦闘用に設計されたセクメロイドでないとは必ずしも言いきれない。普及タイプのものであれ、戦闘用のものであれ、外見上は何ら変わることのない造りになっているのだから。
  オーヴリィは苛々と髪をかきむしり、テスト場を後にする。
  セクメロイドのことを考えただけで、虫酸が走る。今夜はアルコールをしこたま飲んで、スゥに慰めてもらおう。優しくて激しいスゥの身体で、この憤りを鎮めてもらおうと、オーヴリィは思った。



  明け方、オーヴリィが目を覚ますと、隣に寝ているはずのスゥはどこにもいなかった。
  ベッドにスゥの温もりはなく、随分と前からオーヴリィ一人が眠っていたらしい。
  オーヴリィは少しのあいだスゥがいないことについて考えたが、気だるさを感じ、再び眠りに落ちていった。
  昼前になってようやく目が覚めたオーヴリィは、いつもと比べてあたりが騒がしいことに気付いた。
  下はジーンズ、上はランニング姿でスゥの小屋を出た。顔見知りの娼婦に声をかけると、湖のほうで事故があったことがわかった。彼女たちと話している間に何人かの兵士が慌ただしくそちらのほうへと駆けていくのも見えた。
「……誰かが野犬か何かに噛まれたって聞いたわよ」
  一番年かさの女が言うと、
「あたしは熊だって聞いたわよ」
  別の女が横から口を挟んできた。
  どちらにしろ、肉食獣に誰かが噛み殺されたということだろう。
「ねぇオーヴリィ、スゥは一緒じゃないの?」
  いつのまにやってきたのか、スゥと仲のいいミリィが不意に、声をかけた。
「なんだ、一緒じゃなかったのか?」
「一緒に朝食を食べる約束だったんだけどね、あの子、どこにもいなかったのよ」
  ミリィは肩を竦めて言った。
「そう言や、俺が明け方に目を覚ました時もいなかったぞ……」
  オーヴリィの言葉に、周囲にいた娼婦仲間が憶測を口にして喋り始める。噛まれたのはスゥだ、いや、スゥを妬んで誰かがやったんだ、もしくは、女だけを狙った事件だ……と。
  女の憶測は突拍子もない。
  オーヴリィはうんざりとした表情でミリィに耳打ちをした。
「今から湖のほうへ行ってくる。もしスゥを見かけたら、自分の小屋に戻ってるように言っておいてくれ」
「オッケ、伝えとくわ」
  ミリィの言葉を背中で聞き流し、オーヴリィは湖のほうへと足早に歩き出した。
  通い慣れた湖の、あの場所へと向かって。



  湖のほとりでオーヴリィは、スゥとよく遊んだ。
  昼間は散歩をしたり、ピクニック気分に浸ったりし、夜中になると誰もいなくなるのを見計らって二人で素っ裸で泳いだり、時には抱き合ったりもした。
  明け方、オーヴリィが目を覚ました時にスゥがいなかったことに気付いたものの、彼はスゥが湖のお気に入りの場所で早朝の散歩を楽しんでいるのだろうと思ったのだ。そうでなければ、あまり考えたくはなかったが、新しい年下の恋人のところに行っているか、だ。
  足早に繁みを踏み越え、湖への小道を通り抜ける。途中、兵士たちが担架で人らしきものを運んでいくのに出くわした。オーヴリィの知らない顔だったが、下級兵士の死体だった。死体には確かに、娼婦たちが噂していたように熊か野犬にでも噛まれたような傷があちこちにあった。手足が引き千切られているところを見ると熊の仕業のように思えたが、このあたりに熊はいない。奇妙な胸騒ぎをオーヴリィは感じていた。
  担架の一行と別れたオーヴリィは湖に出た。
  ふとボートハウスを見ると、丸太の壁はどす黒い血の色に染められていた。
「スゥ!」
  オーヴリィは恋人の名を呼びながら、あたりを散策し始める。真っ先に小屋の中を覗いたが、惨劇の跡が伺えるほど乱れ、破壊されていた。表に出ると、スゥの名を呼びながらいつもの散歩コースをぐるりと回った。林の中、繁みの小道、ボートハウスの見える丘を回って訓練場を横目に通り過ぎる。一周して再び湖に戻ってきた。
  湖にはボートが一艘、ひっくり返ったままになっている。桟橋にもところどころ穴が空いており、どう見ても熊以上の力を持つ生き物の仕業のように思われた。
  ……そう、例えば、セクメロイド、とか──
  オーヴリィは桟橋にそっと足を乗せると体重をかけてみた。ぎしぎしと桟橋はたわんだが、何とか持ちこたえてくれそうだった。
  桟橋から手を伸ばしてひっくり返ったボートを引っ張ってみると思っていたよりも軽く、両手で縁を持って引くと水面から半分沈みかけた状態のままでゆっくりとオーヴリィのほうへと進んだ。
  オーヴリィはボートを岸につけ、ごろんと元の状態に戻してやった。ボートの後ろのほうは、熊手か何かで叩き潰されたようになっている。五本の引っ掻き傷は、人間の手と変わりのない大きさだった。
  と、その時。
「……リィ……」
  蚊の鳴くようなスゥの声が、どこからともなく聞こえてきた。
「スゥ……スゥなのか?」
  オーヴリィは声を荒げてあたりを見回した。
「ここよ……ここ、オーヴリィ、あたしは、ここ……」
  スゥの声のするほうへオーヴリィは目を馳せて…──そこで、気付いた。桟橋の下だ。桟橋の下、何かから隠れるようにしてスゥは、水の中に身を潜めていたのだ。
「スゥ……スゥ、大丈夫か?  怪我はないか?」
  オーヴリィは尋ねながらも湖に飛び込み、桟橋の下へと潜りこむ。
  スゥは青白い顔をして桟橋の支柱にしがみついていた。
「オーヴリィ……オーヴリィ、オーヴリィ!」
  スゥは冷え切って震えの止まらない両腕でオーヴリィに縋り付いてき、そのためにオーヴリィは彼女を抱えて湖から上がらなければならなかった。



  ベッドに寝そべり、オーヴリィは恋人を眺めていた。
  金髪。白い肌。少しそばかすのある頬。湖に隠れていた時には紫色に変色していた唇も、今は艶やかな赤に戻っている。オーヴリィの唇が辿った胸元……。
  見られていることに気付いたスゥは、恋人を見つめ返して言った。
「……今日はずっと一緒にいて」
  スゥの言葉でオーヴリィがちらりと時計を見ると、ちょうど日付が変わったところだった。
  オーヴリィは言葉で返すかわりに、彼女の身体を少し乱暴に引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
  ──厄介なことになるかもしれないぞ。
  湖から戻って以来ずっと、心の中ではもう一人の自分が警告を発している。
  解っている。解っていたが、どうにもできない。スゥを守りたいと思っているし、愛してもいた。
  彼女は湖で起こった出来事をまだ語ってはいない。
  バラバラの死体の原因はおそらく、彼女かセクメロイドかのどちらかだ。
  もしかしたら軍の上層部は、惨劇の起こった現場にいたというだけでスゥを犯人にしてしまうかもしれない。
  守ってやらなければと、オーヴリィは思った。
  桟橋の下に隠れ続け、死人のような顔をしていた可哀想な女を、助けてやらなければ。
  オーヴリィは恋人の身体を強く強く、抱きしめた。



END
(H12.7.21)
(H24.12.15改稿)


<オーヴリィ・スタッドの章>   <スージィ・ファムの章>   <ジェナの章

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