「エリナ……」
ささやいてトオルは、エリナの耳たぶをやんわりと噛んだ。
「ぁ……んっ」
背筋がゾクゾクとする。興奮しているのと、期待しているのとで、エリナの体はいっそう熱く高ぶっていく。
トオルはエリナを窓際に追い詰めたままの状態で、彼女の服を全部剥ぎ取ってしまった。 着ていたものが床に落とされ、エリナは生れたままの姿でその場に立ち尽くしていた。
「もう、濡れてるね」
トオルが、エリナのアソコに手を滑らせて言った。
エリナの愛液は滴り落ちるほどで、太股を伝い、だらだらと流れ出ていた。床に投げ出されたショーツをちらりと見ると、やはりぐっしょりと濡れているのが見て取れる。
「トオル君も脱ごうよ」
エリナは恥ずかしさに身を捩りながら言った。
「……まだ、だめ」
トオルはそう返すと、後ろからエリナの背に舌を這わせる。うなじ、耳、脇の下。小麦色のエリナの肌は吸い付くような滑らかな肌をしている。トオルの唇が通過すると、そこには鮮やかな朱色の印が浮かび上がった。
「…はぁっ……はっ…んんっ……」
リョージは、こんな愛し方はしなかった。リョージの愛し方は、挿入して、出し入れするだけの単調なもので、こんなに艶めかしく執拗には、愛してはくれなかった。エリナはリョージとのセックスを思い出しながら、トオルの愛撫に身を任せていた。
エリナが窓に手をつくと、トオルは彼女の尻のあたりを両手でがっしりと掴み、固定した。
「入れてもいい?」
トオルの言葉に、今日は安全日だったかどうかを必死になって思い探りながらエリナは、何度も頷いた。
「い…入れて。大丈夫だから。安全かどうかわからないけど、いいから入れてっ……早く、入れて……早くっ………」
トオルの竿は、すでにそそり立ち、先走りの液で濡れていた。彼の先端はエリナの尻にこすりつけられ、ぬちゃぬちゃと湿った音をあたりに響かせた。
「やっ…入れて……入れて、入れて……お…願い……」
エリナは窓に手をついたまま、足を大きく開いて立った。尻を突き出すように、トオルを挑発するかのように。内股にはたっぷりと愛液が滴っていて、トオルはそれを見ると、ごくりと喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
焦らすように、ゆっくりとトオルは挿入する。
エリナが焦れて腰を振ると、トオルはすっと腰を引く。大きな手に腰を固定され、また最初から竿が侵入する……何度かそれを繰り返すうちに、エリナは我慢の限界に到達していた。欲しかった。トオルの、大きなイチモツ。突いて欲しい。激しく、子宮まで届くほどにぐちゃぐちゃにかき混ぜて、陵辱されたい──
胸のあたりから窓にぺたりとくっついて、エリナはトオルに突かれた。
立っていることができないぐらいに膝ががくがくして、気持ちよかった。
「……次は、わたしに………」
立ったままで一度目の波が過ぎ行くと、エリナはくるりとトオルのほうに向き直った。
二人とも汗まみれで、エリナの股間からは自らの愛液に加えてトオルの精液の混じったものが流れ伝っている。
「バスルームに行く?」
荒い息遣いでトオルが尋ね、エリナは彼の手を引いてバスルームへ向かった。
脱衣所に入ったところでトオルが背後からエリナの胸を掴み上げ、再び愛撫を繰り返し始めた。エリナはしばらくじっとトオルの愛撫に身を委ねていたが、彼の手が彼女の脇から横腹、三角の繁へと伸びると、素早く身を離して向き合った。
どちらからともなく唇を寄せると、また貪り合う。何度も何度も唇を重ね、舌を絡ませた。
次に唇が離れた時、エリナは洗面所に尻を乗せ、大きく股を開いた。トオルに、アソコがよく見えるように。トオルのアレが中に侵入してきた時に、突き上げ易いように。
トオルはわざと、エリナの花園を凝視した。エリナが恥ずかしがるように。
それからヴァギナの入り口にあるびらびらをつまんで引っ張った。ぴらりとめくれあがったその奥は、鮮やかなピンク色……汚れのない清純な色をしている。最奥がひくひく蠢いて、どろりとした愛液が滲み出てくるのを待って、トオルはヴァギナに口付けた。
エリナは両足をトオルの背に回し、洗面台に両手をついて腰を前へ突き出した。トオルは露になった秘所をじっくりと舐め回し、舌を入れ、クリトリスに歯を立てた。
エリナの花園がじっとりと濡れそぼり、これ以上はないぐらいに甘い蜜を滴らせる頃になってトオルはようやく、顔を上げた。エリナは、入れて、と言った。トオルの怒張したものを入れてくれと懇願したが、トオルは入れなかった。そのまま彼女を抱き上げ、バスルームへと連れて行く。ドアのところでトオルが軽くよろけると、エリナの肩がドアの角に擦れてほんのりと赤らんだ。
トオルが蛇口を捻るとシャワーからちょうどいい熱さのお湯が出てきた。
エリナのアソコはじんじんと火照っている。それなのにトオルは、そんなエリナをほっぽり出して、シャワーを浴び始めた。
しばらくトオルのすることを見ていたエリナだったがとうとう我慢できなくなり、跪くとトオルの股間に顔を寄せ、食い千切らんばかりの勢いでトオルの屹立していた雄々しいものにしゃぶりついていった。
喉の奥まで飲み込むと、必死に口を上下させ、トオルを愛撫する。亀頭に舌を這わせちろちろと舐めると、トオルは押し殺した喘ぎ声を洩らした。上目遣いにトオルを見ながら、エリナはカリをしゃぶり、ペニスの裏側にまで舌を這わせた。口に入りきらない部分と一緒に指で袋を揉みしだくと、先端の部分から苦くて熱いものがほとばしる。トオルの手が、エリナの髪を鷲掴みにし、やや乱暴に上を向かせた。
浴槽の縁に手をかけたエリナのバックから、トオルは再び挿入する。
今度はさっきよりも荒々しく、暴力的な性交だった。
トオルはたっぷりとエリナを突き上げ続けたが、彼女がすすり泣いて懇願してもなかなかイかせてくれなかった。
それから二人は浴槽にぬるめの湯を張り、もつれ合って湯に浸かった。
「──ねぇ…本当にいつもはこんなことしてないの?」
トオルの裸の胸に寄りかかりながら、エリナは尋ねる。先程までの嵐のようなセックスが嘘のように、二人は満たされた気持ちでいっぱいだった。
「本当だって。でも、エリナは別だった。一目見た瞬間から、こうなることはわかってたよ、僕は」
トオルの言葉に、エリナは心の中で、自分だってこうなることを望んでいたのだと呟く。彼と出会った瞬間に、エリナは彼のオトコの体臭に強く惹かれていた。と同時に、彼に犯してほしいと思ったのだ。もっとも、こうなった今、わざわざトオルにそれを打ち明ける必要はなかったが。
トオルの掌が掠めるように、エリナの乳首をもてあそび始める。
ふと気付くと、湯の中のトオルのペニスは硬く勃起し、エリナの腰のあたりを圧迫していた。
「今度はわたしが、してあげるからね」
エリナは微笑んで、トオルに口付けた。
細い指は素早くトオルのペニスを掴んで扱き始めている。
亀頭の割れ目に指の腹をあて、爪を立てるようにしてなぞるとトオルの身体はびくびくと震えた。男の体も女と同じように指の動きがもたらす快感に反応するのだということを知って、エリナは嬉しかった。
息を吸い込むとエリナは湯の中に顔を突っ込み、トオルのペニスを咥えこんでいた。そうしながら、髪が短くてよかったと、そんなことをぼんやり思う。もし髪が長かったなら、邪魔で邪魔で仕方がなかったことだろう。
息の続く限りエリナは湯の中に顔を突っ込んで、トオルのペニスに愛撫を加え続けた。
湯の中から顔を出すとそのまま、トオルの上に腰を下ろしていく。
エリナが挿入の圧迫に背を反らせると、トオルは彼女の胸を揉みしだき、乳首に軽く吸い付いた。
「ああっ…ん……ん……うんっ、ふ…ぁ、はっ……」
エリナの艶めいた声がバスルームに響く。
トオルは彼女の腰を両手でしっかりと掴むと、揺さぶった。最初は激しく、それから少しずつ抜き差しを繰り返すトオルのリズムで。
エリナは歓喜の声を上げながら、自分も腰を振った。トオルの焦らすようなやり方で攻められると、エリナはどんどん自分が淫乱になっていくような気がしてならなかった。快楽を求めて、自分から相手を求める自分。
恥ずかしい……だけど、これが自分なんだ。今まで自分自身の心の奥底で眠っていた本当の自分はこれなんだと、エリナは改めて思った。
エリナが腰を振るとばしゃばしゃと湯がはね、二人にかかった。
「んっ……や、だめぇ……そ…んな…ところ……!」
トオルの手と唇が胸の突起を、そしてもう片方の手でクリトリスを刺激し始めるのを合図に、エリナは絶頂へと上り詰めてゆく。
膣の中でトオルのペニスがぐん、と膨らんだように思った。と、同時に、腹の中が温かいもので満たされていく。
「あ……あ……」
きゅぅ、とエリナのヴァギナが収縮を繰り返す。男の精液を搾り取るように、きつく締め付けるとエリナは果てた。息をあらげ、嬉しそうにエリナはトオルの胸へとぐったりともたれかかっていった。
どんな関係を自分は、望んでいるのだろう。
ベッドの中でトオルの腕に抱かれたエリナはぼんやりと考える。
二人の関係がこのヴァカンスの間だけの関係であったとしても、それはそれで仕方がないものだとエリナは思っている。日常の生活から離れたところで出会って、相手のことをよく知りもしないままに体の関係を持ったのだから、そう遠くない未来にこの関係が壊れたとしても、トオルを恨む気持ちはエリナにはない。
このコテージで二人が愛し合うことを止めることができる者は、誰もいないだろう。
だから余計に、別れの日がやってくることがエリナには恐ろしく感じられる。
リョージとの別れであんなに傷付いたのだから、トオルとの別れはどんなに大きな傷を残すだろう。
「トオル君……」
そっと耳元でささやいて、それからエリナはトオルの首筋にキスをした。チュウ、と音を立てて、トオルが痛みに小さく呻き声を上げるまで首筋の皮膚を吸い上げ、赤い赤い、跡を残す。
朱色の印をエリナは指先でそろりとなぞった。
「これが消えるまでは、わたしを恋人だと思って」
ささやかなエリナの願いに、トオルは小さく頷いた。
彼女の不安をトオルが正しく理解したかどうかはわからない。
エリナは甘えるようにトオルにしがみついていくと、そっと目を閉じた。
開け放した窓から潮風がさあっ、と吹き込んでくると、心地よかった。
まるでトオルが耳元で名前をささやいているのにも似て、少しくすぐったくて、気持ちいい。
「エリナ」
耳元で、トオルが名前を呼ぶ。
「うん」
目を開けて、腕を伸ばし、エリナはトオルの体をぎゅっと抱きしめる。
恋人同士の短い時間の幕開けを感じて、二人は深いくちづけを交わしたのだった。
(H14.3.22)
(H25.3.31改稿)
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