あやかしの館

  十八歳の稲田智也は高校生最後の夏を謳歌するため、マウンテンバイクを駆って一週間の旅に出た。
  朝は早いうちから起き出して、その日行けるところまでマウンテンバイクを走らせて、田舎道を走っていく。
  その日はちょうど昼過ぎ頃から小雨が降り出していた。
  次第に激しくなっていく雨と強い風は智也の方向感覚を狂わせ、いつの間にか彼は、マウンテンバイクを押して山の中を歩いていた。
  青々としたすすきの葉を押しのけ、どんどん歩き進んでいく。
  気がついた時にはあたりに霧が立ち込めており、自分がどの方角へ向かっているのかまったく解らなくなってしまっていた。
  夕闇が広がり始めたが家の明かりらしきものはおろか外灯すら見当たらない。こんなところで野宿をするわけにも行かず、智也は疲れた足を引き摺ってさらに歩き続けるしかなかった。
  三十分か一時間か……歩き続ける智也の前方に、微かな灯かりが見えた。
  ──民家だ……。
  疲れてはいたが確かな足取りで、智也は灯かりのほうへと歩き出す。
  靄に包まれたその建物は、随分と古めかしい煉瓦造りの洋館だった。
  鉄の門は少しばかり隙間が空いており、智也においでおいでと呼びかけているかのようだ。
「とりあえず、助かったな……」
  呟いて、智也は敷地の中へと足を踏み入れた。
  館のドアのところでマウンテンバイクを止め、壁に立てかけた。ここの主には悪いが、こうしておけば夜の間に雨が降ってもマウンテンバイクがずぶ濡れになることはないだろう。
  智也が呼び鈴を鳴らすと、ドアは重々しく軋みながらゆっくりと開け放たれた。
  ドアの向こうには、薄暗いホールが広がっている。
  恐る恐る足を踏み入れると、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきた。
  暗がりの中、ふと見るとホールの突き当たり、正面の大階段の中程に三匹の猫が思い思いの格好で腰を下ろしていた。黒と白と、茶トラの猫だ。智也を値踏みするように猫たちは、じっとこちらを見つめている。
「……あの……すみません、誰かいませんか?」
  智也の声がホールに響き渡ると、驚いた猫たちはそそくさと立ち上がり、どこかへ逃げ去ってしまった。
「なんだ……誰もいないのか?」
  呟き、智也は階段を上がり始める。
  外から見た時には確かに灯かりが点いているようだったが、智也の見間違いだったのだろうか。
  大階段の手すりに手をかけ、階段を上り始めたところで突然、灯かりが点いた。不意に屋敷全体が明るくなったようだ。
  人の気配に智也が顔を上げると、階段の踊り場に一人の女性が立ち尽くしていた。
  黒く短い髪に、胸元が大きく開いた黒いビロード地のドレス。首を飾るチョーカーも黒なら、恐ろしく細くて高いヒールも黒。濃紅の唇が酷く官能的に、智也を誘っているように見える。
「嬉しいわ。こんな深い霧の日に、お客様がいらっしゃるなんて……」
  彼女は少し低いざらついた声で、言った。
「あ…あの……」
  智也が口を開こうとすると、彼女は妖艶な笑みを浮かべ、首を横に振る。
「さあ、二階へどうぞ。食事の用意ができていますわ」
  差し伸べる女の白い手に導かれ、智也はふらふらと階段を上った。
  彼女が誰なのか解らなかったが、智也は今の言葉で自分が空腹だったことを思い出してしまう。口の中に唾液がじわりと溢れ出し、腹の虫が騒ぎ始める。
  二階の奥まった部屋に通された智也は、そこでしばらくの間、待たされた。
  部屋は広く、凝った細工のシャンデリアが目を引いた。
  最初の部屋にはテーブルと椅子が、智也のためだけに用意されていた。テーブルの上には銀製の食器が並べられていた。続き部屋があって、こっそりと覗くとドアの奥には豪奢な天蓋付きのベッドが一つ。キングサイズのベッドだ。随分と古風で、随分と華美な館の様子に、智也は圧倒された。
  十分ほどして、無表情な老人──彼は、この館の執事だと言った──と、やはり無表情な数人の侍女が食事を持ってやってきた。
「まずはお食事をどうぞ。それから、奥の部屋の右側にあるシャワーもお使い下さい。後で、私どもの主が挨拶に参りますから、それまではこちらのお部屋でお待ち下さいませ」
  執事と侍女たちはそう言うと、数々の食事の皿を用意して部屋を立ち去っていった。



  何の料理かは解らなかったが、香辛料のきいた肉と魚は智也の空腹を充分に満たしてくれた。
  それから、シャワーを浴びた。実のところ夕べから風呂に入っていなかった智也にとって、シャワーもありがたかった。大雑把にバスローブを羽織っただけの姿で、タオルでごしごしと髪を拭きながら智也はあのベッドのある部屋へ入った。
  空腹が満たされ、一日の疲れが癒されていくような気がしているところに、小さな物音が聞こえてきた。カリカリという、ドアを引っ掻くような微かな音だ。
  智也は不思議に思い、ドアのところまで行った。
  ドアを開けると、そこには智也と同じぐらいの年の頃の少女が立ち尽くしていた。
  先程、大階段のところで出会った女性が黒一色だけのいでたちなら、こちらの少女は白いワンピース、白いリボンに白いパンプスと何もかも白ずくめだった。
「あの……君…は……」
  前もって用意されていたバスローブを羽織っただけの姿の智也を見て、彼女はくすりと小さく笑う。
「あたしは美緒よ。お姉様から、久しぶりにお客様が来られたって話を聞いたから、挨拶に来たの」
  言いながら美緒は、部屋に入ってもいいかと眼差しで尋ねかけてくる。
  智也はドアを大きく開け、美緒を部屋に招き入れた。
「それで、あなたは?  あなたは、何て名前なの?」
  と、美緒は屈託なく尋ねかけてくる。
「あ…俺は、稲田智也」
  智也がそう告げると、美緒は白くほっそりとした手を差し伸べた。
「よろしくね、智也君」
  智也が戸惑っていると、美緒は躊躇うことなくさっと智也の手を掴み、握り締める。
「ここにお客様が来るのは滅多にないことなのよ。智也君が気に入ってくれるかどうか解らないけれど……あたしもお姉様も、できる限りのおもてなしをするわね」
  そう言うと美緒はいきなり、智也の身体に自分の身体を押し付けてきた。
  二人はもつれ合ったまま部屋を横切り、あっと言う間にくだんのキングサイズのベッドへとなだれ込んだ。
  美緒の胸が、智也の胸にぴたりと密着している。一見したところ華奢に見えるが、どうやら彼女は着痩せするタイプのようだ。
「ええと……あの…さ、美緒ちゃん」
  智也が口を開きかけると美緒は顔を上げ、艶めかしく潤んだ瞳で彼を見つめた。
「なぁに、智也君」
  美緒のこげ茶色の瞳にじっと見つめられ、智也は頭がくらくらした。
  小柄な彼女の肩に手を回しそうになるのを智也は必死に堪えた。初対面の娘にこんなことをしてもいいのかどうか、智也には解らなかったのだ。
「ねぇ、智也君。あたし、お客様のあなたをおもてなししたいの。あたしの気持ちを汲んでくれる気があなたにあるのなら、抱いて。あたし、あなたの言う通りにするつもりよ」
  もしもあたしを拒む気なら、許さないわよ…──そんな臭いを言外に含ませ、美緒は言った。
「ええっ……あの、でもね、美緒ちゃん……」
  しどろもどろになりながらも智也は、美緒の身体を自分の身体から少し離れたところに置いた。
「あの……あのさ、美緒ちゃん、やっぱりそういうのは……──」
  言いかけたところへ、ドアが勢いよく開け放たれた。
「美緒、抜け駆けは許さないわよ!」
  甲高い、幼い少女の声が響く。
  智也がドアのほうへ視線を向けると、そこには茶色いベルベットのワンピース姿の中学生ぐらいの少女が二人を睨み付けていた。先ほど会った黒いドレスの女性も一緒だ。
「あ……ああぁ……あの、ごっ、誤解です!  誤解なんです……信じてください!  あの……その、あの……」
  智也は慌てて言い訳を考えたが、こんな時に限ってもっともらしい理由が浮かんでこない。
  もごもごと口の中で呟いていると、二人は部屋の中へと入ってきた。
「紹介がまだだったわね」
  ハスキーな声で、黒いドレスの女性が言った。
「わたしは鈴。この屋敷の主です。それから……ご存知のようですけど、妹の美緒と、こちらにいるのが末の珠貴ですの」
  愛想よく笑みを浮かべ、智也は返した。
「俺…いえ、僕は、稲田智也です。食事とシャワーをありがとうございました。図々しくて申し訳ないのですが、一晩、こちらで泊めていただけないでしょうか。このあたりの地理に疎くて……」
  智也が話しているうちに、珠貴がベッドに腰を下ろす気配がする。
「ええ、もちろん、喜んで」
  鈴はにっこりと微笑み、言った。
「ただし、わたしたちのもてなしを受けて下さるという条件付きでなら……」



  気が付くと智也はベッドに押し倒されていた。
  鈴は智也のバスローブを奪い取ると、無造作に床に投げ落とした。仰向けにベッドに倒れこんだ智也のペニスにしゃぶりつき、愛撫を繰り返している。
「あたしたちに恥をかかせないでね」
  そう言うと、着ていたものを何もかも脱ぎ捨てた美緒は智也の顔に上に跨る。
  智也の目の前には女の甘酸っぱい匂いと陰毛と、狭くて深い深い穴があった。美緒は媚肉を指で開くと、子宮まで見えるのではないかと思うほど大きくパクリと広げた。智也が指と舌とでそこにおずおずと触れると、美緒は身を捩って気持ちよく感じる場所を押し付けていく。
「……お姉ちゃん……珠貴も……──!」
  智也の頭のあたりに、珠貴の気配がしていた。智也が美緒の股の間から覗くと、まだ幼い体付きの珠貴が美緒と口付けを交わし、互いの胸をまさぐり合っているところだった。
「あぁ……ん……」
  智也の腰のあたりでは、鈴が豊満な乳房を使って早くも屹立したものを挟み込んでいるところだ。
  三姉妹はそれぞれに艶めかしい声をあげ、淫猥な湿った音を部屋中に満たしていく。
「あっ……あっ、あっ、あっ……──」
  美緒の指が珠貴のクリトリスを擦ると、珠貴の膝がかくかくとなり、香しくも透明な液が太股をたらりと伝うのが智也の目に映る。陰毛はまだ薄く、体付きもまだまだ幼い。それでも珠貴は、その幼い体全てで美緒の愛撫を感じ取っているようだった。
  手を伸ばし、智也は美緒のウエストをぐい、と引き寄せた。力任せにベッドの上に引きずり倒すと、彼女は嬉しそうに智也の首に腕を回してくる。
「智也君……」
  智也は鈴の胸の下から下半身を取り戻し、やや乱暴に美緒の中に自身を挿入した。
「……っ…あっ……」
  胸を揉みしだき、力任せに腰を打ちつけると、美緒は悦んで腰を振る。雌猫だと、智也は思った。交尾中の雌猫だ、と。
「ああ……んっ、いいっ……智也君、いい……もっと………!」
  美緒は足を智也の腰に回し、激しく腰を動かしている。
  そのうちに美緒が智也の上に馬乗りになって、腰を激しく揺さぶり始めた。すると今度は珠貴が、智也の顔のあたりに股間を押し付けてきた。可愛らしい小豆と膣穴はねとねととした液でたっぷりと潤っており、智也はそれを堪能した。指で少し触れただけで珠貴の膝は、がくがくと震え出す。甘い甘い声で、珠貴は鳴いた。
「やっ……あぁぁ……はっあぁ……いやいや、いや、ああぁんっ……珠貴、イッちゃう……」
  一人打ち捨てられた鈴は、美緒の背後に寄り添った。
  美緒が智也の上で奔放な声をあげるのに併せて、鈴は美緒の乳首を揉み、摘み上げる。髪の毛に鼻を埋めたかと思うと鈴は、美緒の白い首筋に舌を這わせた。全身が敏感になっている美緒は更に激しく腰を打ち振るい、声をあげ始めた。
  美緒が真っ先に絶頂に達すると、今度は鈴が智也の上にのしかかってきた。
  鈴のヴァギナは美緒のよりも柔らかで、奥深かった。智也のペニスをすっぽりと包み込むと、きゅっと締めつけ、心地よい圧迫を自由自在に加えてきた。智也は、このまま鈴にイかされるのかと思うと無性に我慢が出来なくなった。腰を引き寄せ、強引に揺さ振りをかけてやると、鈴はよがってひぃひぃと鳴いた。頃合いを見計らって智也は、鈴と体勢を入れ替えた。
  鈴は足を180度に綺麗に開き、智也を受け入れた。膣の奥の快感は鈴の足の先まで伝わっており、智也が鈴の感じるところを突き上げた時には足がぴん、と伸びる。
  その隣では、気を失ってぐったりとなった美緒の身体を妹の珠貴が思い通りのしどけないポーズにさせている。美緒の股間に顔を突っ込んだ珠貴は、舌で美緒のクリトリスをいじくり、指で膣の奥から智也が先に放った精液を掻き出していた。ぐちゅぐちゅという音がして、美緒の股間からシーツにかけてがあっという間にべとべとになっていくのがちらりと見えた。
  鈴の太股を智也は、手で固定した。逃げられないように。智也が優位を保つために。
「あぅ…んっ……ん、ん……ああっ………はぁ……」
  動きを制限された鈴の身体のそこかしこで快感が渦巻いているようだった。解放されたがって鈴が体を捩ると、そのたびに智也の腰が強く締めつけられる。
「あぁ………いいよ、鈴……すごくいい。こんなの、初めてだ──」
  智也が激しく腰をグラインドさせると、鈴は惜しげもなく声をあげる。智也は、鈴がイきそうになるとペニスを引き抜き、焦らし、ゆっくりと追いつめた。
「はぁ……あああ…いやぁっ……ああ、ん、ぁ…はぁっ……!」
  鈴が肩で息をしながらぐったりとすると、今度は珠貴の番だった。
  智也は珠貴の華奢な肩を抱きかかえ、まず、キスを繰り返した。唇と唇を合わせるものから次第に舌を絡める濃厚なものへと移行していき、その間に指で珠貴の二つの穴の具合を調べた。たっぷりと潤った可愛らしい穴は、二人の姉以上に感じ易いのか、智也の指が入り口にかかっただけでだらだらと透明な液を最奥から分泌する。
「…オッパイがいいの」
  恥ずかしそうにうつむいて珠貴が言うのに、智也は頷いた。
  早速、淡い色の乳首を舌と歯で味わってみる。
「あっ…キモチいぃ……」
  固くそそり立った珠貴の乳首は二人の姉に比べると小ぶりだったが、やはり感度は一番いいようだった。
  智也は乳輪に沿って指でじわりとなぞり、先端をくりくりとこね回した。珠貴はそれだけで股間を湿らせ、腰をくねらせた。
「お姉ちゃんたちみたいに、入れて……アレがほしいの、珠貴も……」
  智也はベッドに足を放り出した体勢を取り、珠貴を馬乗りにさせた。小さな穴が智也を受け入れる瞬間に微かな痛みがあったようだが、それ以上に珠貴は快感に酔っていた。智也は珠貴の膣壁が痛いほどに締め付けてくるのを感じ、しばらくは上半身への愛撫で珠貴をリラックスさせることにした。
  唇と唇、舌と舌とを絡み合わせていると、唾液が珠貴の口の端から溢れ出てきた。互いの唇を離した時には透明な唾液が糸を引き、ぷつりと弾けた。
  鈴が起き上がって、珠貴の背後に回った。しなやかな指先で妹の小豆をこすると、珠貴はびくびくと身体を痙攣させた。
「あっ……ああっ……ダメ……お姉ちゃん、やめっ……あああ…ふっぅ………」
  珠貴は頭を激しく横に振り、快感の波に飲まれまいと必死だった。が、鈴の愛撫から逃れようとしたことで反って智也を受け入れた部分が感じてしまったようだった。次から次へと甘い嬌声が上がり、最後には珠貴は自分で腰を動かし始めていた。
  ふと智也が美緒のほうを見ると、彼女は気が付いたのか、こちらをじっと物欲しそうな眼差しで眺めていた。
  智也が目で合図を送ると美緒は素早く身を起こし、彼の上半身を妹から奪い取っていった。
  智也の下半身は珠貴を犯し続けている。
  上半身は美緒にのしかかられ、智也は片手で彼女のふっくらとした乳房を、もう片方の手でさっきの余韻が残るヴァギナを愛撫した。
  智也が手の動きを早くすると、美緒は再び甘い汁を垂れ流しながら歓喜にむせび泣いた。
「あ……ふっ……ん、あぁ………くっ…ぅん……!」
  三人の艶めかしい声が部屋を満たし、麝香のような愛液のにおいに酔いしれるようにして智也は、交互に三人の中に精液を放った。



  翌朝、智也が目覚めると、ベッドの上には三匹の猫が丸くなって気持ちよさそうに眠っていた。
  昨夜のあれは、夢だったのだろうか。不意に、すーっ、と頭の中が冷めていく。
  しばらく考えてから智也は、ごそごそと身を起こした。
  今日中に自宅に帰りつかないことには、明日からのバイトに支障が出てくる。
  智也はざっとシャワーを浴び、すばやく服を身に着けた。
  昨夜のことが夢だろうと、そうでなかろうと、もう、どうでもよかった。確かに智也は三人の姉妹と寝たし、あれが夢ならえげつない夢だと智也は思った。
  手荷物をチェックし、食事も取らずに智也は館を出た。
  家に帰れば、好きなだけ、好きなものを食べることが出来る。
  何故だか解らないが、母親の手料理が懐かしく感じられた。



  美人の三姉妹は古びた館に住んでいた。
  長女は鈴、次女は美緒、最後に末娘の珠貴。
  人里離れた山の奥、怪しげな洋館に美人の姉妹が暮らしていると聞きつけて、ごく稀に様子を見に来る人がいることもあった。
  そして今夜も、ふらふらと灯かりに飛び込んでくる蛾のように、道に迷った青年が、この館に引き寄せられるようにしてやってくる──



(H18.5.25)
(H25.9.30改稿)



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